乙女ゲームマラソン Z

vitaのオトメゲーをセイハするブログ

17★見たいものも、見たくないものもすべて見せる【絶対階級学園】

絶対階級学園 - PS Vita

ユーザーの心の闇が暴かれる。

絶対階級学園

ジャンル

 会話タイプ

現代(オリジナル歴史)×学園×身分差

時間 共通 約3時間 個別 約2時間 総プレイ 30時間ほど

二周目以降 共通20分程度
ひとりにつきグッドエンドが3つ。

バッドエンドが5つあるので、すべて回収しようとするともう少しかかります。
また、バッドにスチルのあるキャラがいます。

攻略人数  5人 制限 全員クリア後真相ルート解放
ヒロイン

藤枝 ネリ(デフォルトネーム 変更可)

下層地区からきた異例の転入生。

デフォ名でも音声なし
特記  一部、金太郎飴シナリオ有り。 公式HP(Daisy2・プロトタイプ)


Eden with roses and phantasm


――乙女ゲームで、ミミズ扱い。

 

キャッチコピーにしたくなるほど衝撃的な要素を孕んだ作品でした。こんな時でないとこいつ…「―(ダッシュ)」を使う機会がないので多用します――。

この作品はネタバレ部分に関わらず先入観ゼロでやると超絶楽しめると思います。やればやるほど、ユーザーが透けてくるゲームです。開始早々にスッケスケになったことで、己が如何に薄っぺらい人間かまざまざと気付かされました。休日の朝から乙女ゲームをニコニコやっている時点でだいぶ浅ましいのに、まさか乙女ゲーム側から報復されるなどとは想像もしていなかったのだ――。

 

  • シリアスな物語がみたいよ
  • きれいなスチルが好きだよ
  • メリーバッドエンドが好きだよ

という方には良いのでないかしらと思いますが、生半可な気持ちでいると足首持って行かれますのでお気をつけください。

 

以下、物語の内容には触れていませんが、仕掛けや仕組みなどネタバレを含んだ感想を書いていますのでご注意ください。

 


ちなみにこんな感じでプレイしています。

zonna.hatenablog.com

 

 

★ストーリーについて

それは乙女ゲームをやっていて初めての経験でした。通常時の私は、行き当たりばったりに攻略順を決めています。人生と同じです。基本的にはキャラの見た目と性格のファーストインプレッションでその人のルートに入るようになんとなく調節しますが、入れなければ入れないで別に良い、という気持ちでいます。ひどいゆとり人生。

ところが絶対階級学園のプレイ中は、無意識の内にキャラを「見た目」と「性格」と「階級(立場)」で判断していることに気がつきました。作中において、階級というものがほぼすべてを決定づける非常に力の強い要素だからです。

選んだパートナーによって周囲から受けるヒロインの扱いが変わることは、乙女ゲームにおいてはよくあります。致し方ない事情があって権力者の恋人になるというのも、恋愛ものではベタな設定です。でもそれはシナリオ上、あるいは好きになった人が権力者だったからであって、権力者だから近付いたのではありません。

私はそういう基準で攻略キャラを選んだことがなかったので、真っ先に権力を持った馬鹿を選んだ自分に驚愕しました。立場で選ぶのなら、以前までの傾向でいうと「権力に対抗する者」か「無関心な者」にいくはずですし、実際に彼らに好意を持っていました。同じく権力を持った正統派のキャラにも好意を持ちましたが、スルーして馬鹿者を先に選ぶ辺りに浅ましさと三十路感が透け出ている。外見や性格すら越えて、すぐに籠絡できそうなチョロい奴を選んだのです。

つまり私は階級制度という学園のルールをヒロインよりも先に受け入れ、嫌悪感を抱きつつも期待し、楽しんでいる。キャラをひとりの人格ではなく属性や立場というカテゴリで判断したくせに、選択肢ではきれいごとを述べる。

良心の呵責と自己欺瞞に蝕まれる

ルートによっては、ゆっくりと自分が駄目になっていく、堕ちていく感覚すら味わえます。正義のない世界で佇む孤独、じっとりとした不安感が常につきまとう、あぶり出しのようなゲームです。炙られて出てくるのは弱さ、自分を貫くことの難しさ、そもそも自分という存在の不確かさ。

既にゲームから抜け出した今では心底どうかしていると思える階級制度ですが、人間の本性をじっくりと見据えるストーリーは非常に丁寧で、共通からぐぐっと引き込まれるものがありました。だからこそ立場で人を選ぶ、という感覚が呼び起こされたとも思っています。と、言い訳しておこう。

 

★恋愛要素について

惹かれ合うまでの過程がハイパークオリティで常に舞い上がりまくりでした。テーマのチョイスがシャレオツ、会話にエッジが効いている、学園モノの良さを感じることのできるエピソードが随所で見られるなど、感心すら覚えてしまいます。特に、会話感が本当に素晴らしいと思いました。

恋愛の基本は、話していて楽しいこと

ちょこちょこと挟まってくる笑いのシーンがキャラクターを生き生きとさせますし、ヒロインのネリちゃんの返しもセンスがあるので、ふたりが仲良くなるのも当然のことだと心から思います。楽しい気持ちでいられる時間が長いです。

「この人と話すと楽しいな」という感覚は、男女ともに恋愛の基本ではないでしょうか。それをユーザーに体感させることで、階級制度への意識に対する強い揺さぶりをかけてくるところがなんとも皮肉です。

結局人というのは人を好きになる生き物であり、どれだけ金や地位と比べたところで、話していて楽しい相手、言わば素のままの人には敵いません。身一つの人間に心は既に屈服しているくせに、まだ外面を取り繕おうとする。人間ってすごく捻くれていますね……でもそこが面白いんですよね……と、これ恋愛要素の項目で言うことなのだろうかと自問したくもなりますが、こちらの作品は基本的にそんな恋愛ばかりなので仕方ありませんでした。

人間の本質に迫るすごい作品だと、改めて思います。

 

★特筆したいこと

手が止まってしまった手のスチル

とにかくスチルの質にため息が漏れに漏れて大変でした。幾度となくテキストを消しての鑑賞会が突然おっ始まるため、ある意味物語の邪魔になるほど魅力的なスチルの数々に出会えます。

基本的に乙女ゲームのスチルはきらきらしていて綺麗なのですが、階級学園のスチルはそういった面よりも、とても実質的で、キャラの魅力を最大限に引き出すような凝った構図と空気感が抜群です。ふたりが笑っていると本当に楽しいことが伝わりますし、シリアスなシーンではスチルの方からぐわ~ッと物語を牽引する瞬間が何度もありました。

あるルートでは、手と物しか描かれていない思い切ったスチルがあったのですが、それはスチルの意義のようなものをすごく感じさせてくれました。

手と物だけで温かみや緊張を表現できるイラストやテキストがすごいのはもちろんのことですが、わざわざスチルにすることによって特別感が非常に高まります。その物や思い出が、とても大切なものとしてユーザーの記憶に刻まれる。それがスチルの極みという気がするのです。

どうでもいい場所で、あってもなくても良いようなスチルを出してる場合じゃございません。ここぞという場所で、ハッとするスチルを出してくれるゲームは乙女の神棚に飾っておきたくなります。乙女ゲームをしまってある棚の名称

そんなわけで、手が好きな方にはせっせとおすすめ致します。和田ベコ先生の描かれる絵は手が大変素晴らしいと思います。ところが体型も表情も大変素晴らしいので、手以外がお好きな方にもやはりおすすめしたいところです。

 

★おわりに

ひとりにつきグッドエンドが3つにバッドエンドが5つ用意されていますが、グッドの内ひとつはメリーバッドエンドに属すると思います。バッドエンドは選択肢をミスしてすぐ終了するものもありますが、ある程度展開して別の物語としてしっかり終わる、というものも多いです。特にあるキャラはバッドで報われる部分があるなど随分とバッドエンドに気合を入れている作品なので、好きな方にはとても嬉しいと思います。

ところで全員のグッドエンドを見ると真相ルートに入れるのですが、非常に残念なことに金太郎飴シナリオなので全員分クリアするのがしんどく感じてしまいました。真相に入るまでは罪悪感や背徳感と戦っていたのに、後半は襲い掛かってきた睡魔と倦怠感相手に戦う気力もなく、抱え込んで8時間もの間ひたすらボタンを連打している。なるほど、これが魔法が解けるってことか、皆で現実の世界に戻ろう……と悟りを開いて今すごく冷静です。

振り返るとまったく不思議な情熱を持った作品だったことがよくわかります。アツい内に終わる作品というのは、幕が下りてもこっちの気持ちがまったく落ち着いていないので、しばらく興奮状態が続いてしまうということがよくあります。そしていろいろなことに思いを馳せながら眠りにつき、翌日になってようやく元に戻る。へたすると数日引きずる作品さえあるので大変です。

けれど階級学園は徐々に、ゆっくりとクールダウンさせてくれたので、少しも日常に支障をきたすことなくフラットな気持ちで過ごすことができます。真相に入る前のどんどんぱふぱふフィーバー状態がまるで数ヶ月前のことのよう。そんな風に考えることも可能ですがなんぼなんでも8時間は長すぎですうううバカあああなんで金太郎にしたあああこのおおおクッソおおおでも壁紙欲しさにトロコンしてしまったあああ あああ…… あ……

 

~スチルは偉大、そして正義、かつ魔性なり~ (完)

 

 

絶対階級学園 - PS Vita

絶対階級学園 - PS Vita

 

わあ、今にも楽しい学園生活が送れそう。