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乙女ゲームマラソン Z

vitaのオトメゲーをセイハするブログ

2★忍びは何になれるのか【百花百狼~戦国忍法帖~】

百花百狼~戦国忍法帖~ - PS Vita

誰もが生き方に縛られているのかもしれないと知る。

百花百狼 ~戦国忍法帖

ジャンル

小説タイプ

 戦国時代×忍び

時間共通 約2時間 個別 約4.5時間 総プレイ 20時間ほど

二周目以降は共通30分程度。個別に入ってからは、同じテキストなのにスキップのきかないところが

あったので、飛ばし飛ばしで平均3時間ほどになるかと思います。

バッドエンド(スチルあり)回収するなら+1時間ほど。

攻略人数  5人 制限  なし
ヒロイン

上野 槐 (デフォルトネーム 変更可)

大切に育てられた里の長の娘。16歳。

特記 非常にシリアスです。 公式HP(D3P)

 

驚きの連続で度肝がなくなる

最も驚いたのはヒロインである槐(エンジュ)が結構な確率で立ち絵に現れることです。

「ということは、ワイは……誰や!」 A・観客。

選択肢も少ないので、プレイヤー=主人公という作りが好みの方は注意が必要かもしれません。これは完全にエンジュの物語であって、ユーザーは彼女の生き様をひっそりと見守る影。暗転でvitaに顔が写って「ひゃっ」となる闇の生き物です。

 

ルートによって、温度にバラつきがあります。シナリオそのものはどのルートも素敵です。すごくときめいてしまったルートとボロボロ涙が出てしまったルートとあるので、調整が欲しい方はどこかで攻略順を参考にされたほうが良いと思います。重たいキャラは本当に重たい。10kgの米でギックリ腰になる私はまんまと後半に持ってきたキャラクターと共にボロ雑巾になって終わりました。これはこれで良かったと感じますが、ギャップに心が抉られたのも事実です。

練られたストーリー、心地よい文章、ドゥードゥ、ドゥーとくる音楽(やればわかる)、距離感のある動き回る立ち絵に上質なスチル、それに合わさる声優さんの演技がサブキャラ含めて本当に素晴らしくて、手放しでオススメできる作品です。

 

  • プレイヤーは主人公じゃなくても良いよ
  • まあまあの暴力的な描写・胸糞にも耐えられるよ
  • チャラチャラしてないマジもんの忍びが見たいよ

という方は良いのではないかしらと思います。

 

以下、物語の内容には触れていませんが、仕掛けや仕組みなどネタバレを含んだ感想を書いていますのでご注意ください。

 

ちなみにこんな感じでプレイしています。 

zonna.hatenablog.com 

 ★ストーリーについて

主役は忍びという存在そのもの

この作品はここまで忍び達を主人公にするかねって程の舞台を作りあげて、とにかく忍びという人種にこれでもかってくらい徹底的にスポットライトを当てて、こんだけ光を当てれば影も濃くなるだろ的な理論でもってハッキリとした闇を浮かび上がらせて、それに真っ向からシナリオ勝負を挑んでいるところにすごく好感が持てました。

この時代の職業というのは単なる仕事という意味でなく、その人間そのものを表す命と同等の価値を持ったものだったと思います。フィクションと史実の忍者は大きく違っているようですが、突出した戦闘力と特殊な戦法、使命を背負った生き様にはそれだけで心惹かれるものがあります。それ故か、数多の作品の中でかなり過酷な扱いを受けてきた超ブラックな職種だといえます。

その忍びという存在を、乙女ゲームだからといって都合の良いところだけを掻い摘むのではなく、エンジュの身に降りかかったできごとを通してまざまざと痛いくらいに見せつけてきます。「なぜ生きるのか」「どう生きたいのか」ということを何度も何度も強く訴えかけてくるストーリーでした。

 

★恋愛要素について

恋ではなく愛、ときめきではなく切なさ

生き死にのシリアスを撒き散らしておきながら、ものの見事にどのルートもうまいこと恋心を組み込んだと思います。恋愛どころではないはずのキャラもいますが、「恋愛」と言うからなんだか浮かれている雰囲気になってしまうだけであって、「愛情」と言い換えれば充分に納得のいく展開ばかりでしたし、ありきたりな物語にはしない、という気概を感じます。

 

★特筆したいこと

この時代は、当たり前に人が人として生きられません。それが忍びであれば尚のこと、彼らは命令によって動くただの道具であり、その命は自分のものではなく主のもの。

格の違いを見せつける主人公、その背景

箱入りだったエンジュは、良くも悪くも忍びとして生きる決意が足りていません。守られることを厭っても、ひとりで生きられるほどには強くない。その弱さや迷いが自分や他人を追い詰めることもあるけれど、この世界に浸かりきっていない彼女だからこそ、忍びの在り方を見つめ直すことができたのだと思います。

私達が生きる現代と戦国の世をつなぐ架け橋として、また乙女ゲームの主人公として、必要なバランス感覚を備えた人物でした。

そして、そんなエンジュを下支えしているのはもちろんライターさんの力です。文章がとにかく心地良い。また一言一言にセンスを感じました。「かっけーな!」と思わず唸ったセリフはひとつふたつじゃない。会話の応酬がキャラクターをどんどん引き立てます。

忍者あるある的な会話はとても楽しく、アクションシーンは工夫が凝らされ、さぞ膨大な知識を取り込んでから執筆されたのだろうと想像に難くないです。

百花百狼には良いところがたくさんあるのだけども、結局はどれもこれも緻密で丁寧な努力の集合体だと思います。見せ場が見せ場として輝きを放つのは偶然ではないです。ひとつの良きシーンをつくるために、テキスト、イラスト、音楽、演技、画面の構成が力を合わせているのがひしひしと伝わってくる。

初回プレイ時、いちいちすべてに感動してしまったのも当然かもしれません。

 

★おわりに

ゲーム中、或いは終わった後、「はあああ」とよくわからない長めのため息が漏れることがあります。

感覚的には「やってくれたな」的な気持ちから出るものだと思うのだけど、今回はそれも含めて息の詰まる展開からの解放感が凄まじく、頬は濡れとる頭はぼうっとしとる腹は減っとる、それでもなかなか動けず仕方ないのでため息をつきまくる、と抜け殻状態に。抜け殻はため息なんてつかないけれども。

作品に「入りきって」、「戻ってきた」この感覚がとにかく得がたい。あ~得がたい。

さて、作品上でタイトルの回収が行われると嬉しい人はたくさんいると思います。私はそれが大好きなクチで、この作品の回収の仕方は特に最高でした。

というのも運良くタイトル回収ルートが一番最後だったので、そこに至るまでに他のキャラのルートで色んな人の色んな生き様に触れていましたから、作品に深く入り込むことができている状態で回収されたのです。もし彼を一番最初に攻略していたら、言葉の重みを感じることができなかったかもしれない。こういうことがあるのも、乙女ゲームの性質なのだと思います。ラッキー!

 

こうして良い思い出が増えてしまったから、「あー、超楽しかった!」なんてことが言えるわけで、選択肢でクイックセーブができないくらいの欠点なんてまったく気にならないですよね。バックログもない

そりゃまあ、現実にはその両方の機能なんてないけどさ。

来るか……? もうすぐ選択肢くるか……? と思いながら、こまめにセーブを繰り返しやっていたのも良い思い出となって脚色されています。

この記事を書こうと改めていくつかのテキストを読んだけれど、半蔵ルートのアクションシーンをすべて見返して、このふたりの戦いを一生見ていたい、と思いました。プレイ中は早く終わってあげてほしかったのに。所詮わたしも虎狼の民ということか。

はい言ってみたかっただけ

 

百花百狼~戦国忍法帖~ - PS Vita

百花百狼~戦国忍法帖~ - PS Vita

 

 もう忍者になりたいなんて二度と言いません。